(一社)NTDs Youthの会

2025.04.07

- 連携による政策づくりと若手の人材育成 -

一般社団法人NTDs Youthの会は、世界で16億人もの人々が影響を受ける顧みられない熱帯病[1](Neglected Tropical Diseases, NTDs)のアドボカシー活動に取り組む団体である。

毎年1月30日の「世界NTDsの日」には、国内の産官民学のパートナーと連携し、「顧みられない熱帯病コンテスト」を開催して、学生がNTDsについて主体的に学ぶ機会を提供している。今年2025年のコンテストでは、外務省と厚生労働省から後援や審査委員派遣の協力を受け、SNS審査での1万回再生、約2,500名にリーチする成果をあげた。

[1] 顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases, NTDs): NTDsとは世界保健機関(WHO)が定義する21の疾患群で、主に熱帯地域の貧困層が感染のリスクにさられている。具体的には狂犬病やハンセン病、デング熱など。

連携による政策づくりをめざすプロジェクトをきっかけに

NTDs Youthの会は、(株)PoliPoli主催の「Reach Out Project(ROP)」を契機に2023年に発足した。ROPは、グローバルヘルス分野におけるルールメイカーの育成を目的に、アドボカシーや広報の支援、団体の組織運営サポートなどを行うプロジェクトである。

ROPの一環で実施されたインド視察では、メディア関係者と若手リーダーが共に現地を訪問し、グローバルヘルスに取り組む日系企業や現地NGOなどの実態を学んだ。現地で活動する製薬企業や医療機器メーカーの取り組みを目の当たりにし、帰国後はこれら企業との協力関係構築に向けた対話を開始するとともに、一部の企業とは情報共有の枠組みを設け、現在共同でNTDsの認知度向上を推進している。

市民社会からのデータに基づいた政府への提言

日本政府は、国際保健を外交政策の重要課題と位置づけ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けたリーダーシップを発揮してきた。NTDs Youthの会は、国会議員や関係省庁との定期的な意見交換を通じて、日本の国際保健政策の共創を目指し、特にNTDs対策の費用対効果の高さをデータに基づいて分析し、政策決定者に提言している。同時に、グローバルヘルスへの市民の関心を高めるためにNTDsの認知向上と理解促進を目的とした活動も展開している。

多様な企業との連携の模索

これまで、NTDs Youthの会は、製薬企業やメディアを中心に多くの企業、行政機関と連携してきたが、連携先はNTDsや国際保健に理解の深い企業が中心である。今後、パートナーシップを広げていくためには、より多様な企業との連携を模索する必要があるだろう。

そのためには、グローバルヘルス分野、特にNTDsに取り組む意義や企業側のメリットを、データに基づいて可視化していくことが重要である。NTDs対策への貢献が、企業価値の向上、従業員のエンゲージメント強化、新たなビジネス機会の創出に繋がる可能性などを具体的に示すことが求められる。

今後は、ユースNGOとしての立場から、引き続き国際保健分野におけるルールメーキングに現場の声を反映することを目指すとともに、現場経験を有する若手人材を育成し、彼らが国際保健政策に積極的に参画できる仕組みづくりにも力を注いでいきたいと考えている。

文筆:(一社)NTDs Youthの会 代表 轟木亮太

財務副大臣への提言

(財務副大臣に提言書を提出(右から3人目が筆者))