
1年の取り組み、進捗を報告
複雑で多様になる社会課題に、セクターを超えて共に取り組むことを目指す活動「Shared Vision(シェアード・ビジョン)」が2月27日、東京都内・虎ノ門の森ビルGlass Rockでワークショップを開きました。この一年間、全国で展開してきた取り組みを振り返り、その成果を発表する目的で、各地のワークショップに参加したNGOや企業、団体からの関係者40人以上が集まりました。
シェアード・ビジョンでは2025年度内に東京、大阪、福岡の3会場でNGOと企業・団体などマルチセクターの連携を促進するためのワークショップを開いてきました。合計で30団体から40人余りの参加があり、「自分・自団体の強みを知り、他者との連携の可能性を見出す」ことに取り組みました。
今回の成果報告会では、まずワークショップの参加者から、これまでの進捗について例えば下記のような報告がありました。
・NGO側が、企業が参入しやすいメニューを作成する必要があることに気づいた。
・NGOの活動地では、支援のみならず企業進出も含めた連携の可能性がある。
・企業とNGOが、お互いに対等であるという認識に基づいた活動が大切。
・直接の援助ではなく、企業内で社員一人ひとりの意識向上を促す研修も有効。
さらに、連携のプロであるシェアード・ビジョンの伴走者が、NGOや企業と共に取り組んだ具体的な事例として、「認定NPO法人PLAS」、「スターゼン株式会社」、「認定NPO法人藤沢市民活動推進機構」の3団体から詳細な報告がありました。
アフリカの子どもたちの教育を支援するPLASからは、事務局長理事の小島美緒さんが、具体的な企業連携を想定し、その「課題」と「可能性」を報告しました。課題としては、持続可能な活動にするための財源や人員、さらに企業側の既存のCSRとの調整で社内の合意形成をどう進めるかといったことが挙げられました。一方で可能性としては、PLAS側の20年に及ぶ実績や、支援が必要な一人ひとりにリーチする「ラストワンマイル」の力、そして現地を含む関係者全体をコーディネートする力が、こうした連携において効力を発揮すると分析しました。
この取り組みについてシェアード・ビジョンの篠原大作さん(日本ハビタット協会理事・事務局長)は、「連携したいと思う企業がビジネスを展開できる環境を切り拓く手伝いを、NGOがどのようにできるか。そういう考え方をすることも大切」と助言しました。
食肉や食肉加工食品を中心とした食品会社「スターゼン」からは、サステナビリティ推進室長の脇坂努さんが、NGOとの連携を模索した過程を説明しました。脇坂さんは、動物が食肉として加工されるプロセスについて、「命をいただくという事実」をもっと消費者に伝える必要があるのではないかと考え、その取り組みでNGOと連携できるのではないか、と考えました。
自分たちの食べているものがどのように届けられるのか、その現実から目を背けずに命と向き合うことは、「見えない構造を見ようとする力」の育成につながる、と指摘する脇坂さんが連携のパートナーとして候補に挙げたのは、「認定NPO法人開発教育協会(DEAR)」です。報告会に参加していたDEAR事務局長の中村絵乃さんは、「食品、衣服、スマートフォンなど身の回りのさまざまなものを通じて私たちは世界とつながっている」として、企業がその事実を消費者に示していくことの意義を強調しました。両者は今後、協働の可能性について探っていくということです。
この取り組みに伴走している丸原孝紀さん(東急エージェンシーSDGsプラニング・ユニット「POZI」)は、「企業とNGOが課題の先にあるビジョンを共有することが大切。会社や組織という枠を超え、チームとして取り組むことができるかどうかがカギになる」と助言しました。
多様な市民活動を支える中間組織「藤沢市民活動推進機構」からは、理事の五十嵐めぐみさんが報告しました。
行政と団体や企業を連携させながら、より効果的な活動を生み出していく中間組織には、「つなぐ」という実績や経験が豊富にあります。その中で、「お互いの現場に行ったり、お互いのことをよく知ったりする機会が少ない」「使う言葉や目的達成への速度が違う」「行政が主導する地域人材には限界がある」といった課題がみえていると指摘しました。一方で、「20~30代で企業からNGO/NPOなどへ転職する人もいる」「60代からのキャリアとしてのNPO」など、橋渡しだからこそ見える企業とNGO/NPOの関係における新しいトレンドについても報告しました。
ただ、自らが活動現場を持たないがゆえに、「何を自分たちのリソースと考えるか」「団体としてのアイデンティティをどう持つか」「存在意義をどのように外部に示すか」といった点で、課題や悩みがある、との報告がありました。
シェアード・ビジョンをサポートする外務省国際協力局の岩上憲三・NGO協力推進室長は報告会の終わりの総評で、「国際協力は垂直ではなく、水平方向の協力がますます重要になってきている」と述べました。また、2015年に政府のODA大綱(政府開発援助大綱)が「開発協力大綱」へと変わり、ODA以外の公的資金や民間資金も活用した包括的な国際協力を目指す姿勢を打ち出したことに触れ、「様々なアクターが連携し、オールジャパンで取り組んでいこう流れになっている。今回の報告会で伺ったような取り組みが連携事案となり、どんどん広がっていってほしい」と期待を示しました。

※本成果報告会は、外務省令和7年度「NGO研究会」の一環として実施しました。